インテリア計画の中では、どうしてもカーテンや壁紙の選定などに目を奪われがちですが、照明プランの作成も、とても重要なことです。
特にお勤めの人などは、どちらかというと日中よりも夜間に照明された室内空間を見ることのほうが多いのですから、出来るだけ自分の好みの空間になるように時間を掛けて検討する価値は十分あります。
ところが、そんな重要な照明プランなのですが、実際に施主の方が一から計画を立てる事はまずありません。なぜなら、壁紙選定のように単にデザインの良し悪しだけで選ぶのではなく、照明にはその部屋に合った明るさ、色合い、配光にするという技術的な面もあるからです。
一口に明かりと言ってもいろんな要素があります。
一般的に明るさという光の量についての尺度、これは照度と呼んでlx(ルックス)という単位で表します。例えばリビングの照度は200lx、食卓の照度は300lx、勉強机の照度は800lx必要だというように表現されます。
照度は住宅に推奨される基準というものがありますので、大凡はそれに合わせて、あとは高齢者であればそれより少し高めに設定するとか、落ち着いた雰囲気が好きな人ならば少し低めに設定するというわけです。しかし、目標とする照度を正確にだそうとすると、ランプ種類や照明器具の配光、照明器具の取り付け位置から照らす面までの距離などのデータをインプットして計算するわけですが、まあそこまではやらずとも、どんな器具を使ったらどの程度の明るさが得られるかぐらいは知っていないとプランも立てようがありません。
それ以外にも、光の持つ温かみを表す色温度という指標があり、これはK(ケルビン)と言う単位で表します。オレンジ色のような温かい感じの明かりと青みがかった爽やかな明かりがありますよね。通常3,000K以下の光源はやや赤みがかった光色、7,000K以上になるとやや青みがかった光色になります。
また、その明かりがどの程度照らされる物の色を忠実に反映するかを表す演色性という尺度もあります。例えば食卓に並んだ果物やお刺身などの色が照明によってずいぶん異なることは経験されている事と思います。演色性は一般には平均演色評価数Raを指標として用いており、白熱電球がRa100、白色蛍光灯はRa60、高演色性蛍光灯ならRa84、LED電球はRa80というように表されます。さきほど述べた様に、食事を美味しく見せたいダイニングや顔色などを正確にみたい洗面所の照明などに演色性の高いものが望まれるのは当然です。
その他にも照明には眩しさや発熱度合、ランプ寿命や消費電力などなどプラン作成のために考慮にいれないといけないものがいっぱいあります。
これらの要素を総合的に考えて照明プランを設計するのがなかなか大変なのもお分かりいただけるかと思います。
というわけで、家づくりの際に実際に良く利用されるているのが、照明メーカーが行っている「照明プラン作成サービス」です。照明プランを作成することによってそのメーカーの商品を入れ込むことができるので、殆どの照明器具メーカーが無料でサービスしてくれています。
建築業書の方でも面倒な事は避けたいので、インテリア計画の段階になると「照明プランはメーカーに依頼してやってもらいましょう」という話になることが多いのではないでしょうか。
もちろん、それはそれで良いのですが、その際に気をつけなければならない注意点が幾つかありますのでそれをご紹介します。
まず、照明メーカーのプランナーが全て、しっかりした知識を持った人ばかりであるとは限らないことです。
前述したとおり、非常に多くの物件で作成依頼がメーカーに行くものですから、その数を処理するためにはどうしても専門的な知識や経験のある人だけでは足りません。どちらかと言うとそういう専門プランナーは店舗とか施設とかの大口物件の処理で手一杯で、一般住宅の照明プランは営業担当者がコンピュターソフトを使って片手間にやっている事も少なくありません。
ですから、時々「これは??」という提案が出てくることもあります。専門家が選んでくれたのだからと出てきたプランを鵜呑みにせず、自分なりに検討し直してみることが重要です。
次に、当然と云えば当然ですが、メーカーから出てくるプランはそのメーカーの商品しか載っていません。しかもなるべく利益率の高い商品を選ぶように出来ています。販売する立場から言えば付加価値の高い新商品を選びたくなるのは人情ですから、そのあたりを割り引いて考えてみることも大事です。
施主とすれば、別にそのメーカーだけで揃える必要もないわけですから、他のメーカーの商品でもっと気に入ったものがあれば遠慮なく申し出ればいいし、自分には必要のない機能(例えば調光機能やセンサー機能等)がついた商品が提案されてきたら、不要な機能を外したシンプルなものに変更して貰えばよいのです。
そうはいっても具体的にどんな点に注意したら良いのか、と戸惑われるかもしれませんので、私が経験した中から幾つかの例を下記にあげてみます。こんなことも参考にして、出てきたプランを自分なりに検討して最良なものに作り変えてみていただければさいわいです。