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マイホームの新築時に気をつけておきたい注意点

設計、間取りについて 

「防音のためにグラスウールを充填しましょう」

防音のためにグラスウールを充填しましょう説明図

完全な防音室とはいかないまでも、他の部屋よりも防音性を高めたいという部屋はあるものです。
「うるさいと眠れない」という人の寝室とか、老人室とか、ちょっと楽器をかなでたい部屋とか、寝室の隣のトイレとか、隣の工場に近い部屋とか、あまり予算はかけないで少しでも防音性を高めたいという部屋のことです。

そんな希望を建築業者にもちだすと、「では、防音のために間仕切り壁にもグラスウールを充填しましょう」という言葉が返ってくるかもしれません。
グラスウールとは細いガラス繊維を綿状に組み合わせた建築材料で、主に断熱材として外壁や天井内部に充填しているもので、大量に使われることから材料価格もそれほど高くないし施工も簡単なので、予算をかけずに間仕切り壁の防音性を高めるにはもってこいの方法だと思われているからです。

防音のためにグラスウール
たしかに、グラスウールは主たる機能の断熱性以外に吸音性の高さでも知られており、有孔ボードの背面に寒冷紗を貼りその中にグラスウールを充填して吸音室を作るような使われ方もしますので、防音性を高めるのに役立つ材料であることは事実です。

しかし、よく混同しがちなのですが、防音には、「遮音すること」と「吸音すること」の2つの意味があります。
遮音とは音のエネルギーを遮断することで、隣の部屋の音を聞こえないようにする場合に用います。
吸音とは音のエネルギーを吸収することで、室内で発生する音を減衰させる、つまり反響しないようにする場合に用います。
とうことですから、先述の部屋の「防音性を高めたい」という要望は、ほとんどが「遮音性を高めたい」ということなのです。

グラスウールは吸音材としては優秀かもしれませんが遮音材としての効果はあまりありません。遮音性に関しては「重量則」というものがあり、基本的に重いもの(質量が高いもの)ほど遮音性が高くなります。
ですから、軽い材料よりは重い材料であるコンクリート、それよりも重い鉄、それよりも重い鉛というように重ければ重いほど遮音性は高くなります。しかし一般住宅で防音性をあげるためにそんな材料を使っていたら予算がいくらあっても足りません。

実は建築材料の中に、安くて重い材料があるのです。それが、石膏ボード。石膏ボードは一般住宅の内装下地として一番普及しているものなので、材料費も施工費もとてもリーズナブルです。しかも重いので遮音材としてはうってつけなのです。
ですから、部屋と部屋との遮音性を高めたい場合は、グラスウールを充填するよりも室内下地の石膏ボードを2枚貼り、あるいは3枚貼りにしたほうが遥かに効果的です。

「でも、吸音性の高いグラスウールを内部に充填する方法でも、内部で音のエネルギーを減衰させてくれるのだから効果があるのでは?」と思われる方も多いでしょう。
たしかにそのとおりで、壁内部で伝わる空気伝搬音をグラスウールの吸音効果により減衰させるのに加え表面材の振動もある程度抑えてくれるので、全く使わないよりも充填させた方が遮音効果も多少はあがります。そのグラスウールにしても密度が高い(重い)もののほうが効果がありますし、ロックウールやセルロースファイバーなどの高密度品のほうがもっと効果があります。それでも、先に述べた石膏ボードの費用対効果には到底及びません。
実際に実験したり実現場で使用したりした経験でいえば、内部にウール材やファイバー材を充填した効果は思いの外少ないのでがっかリすることになります。それよりもやはり、重量則にのっとって、石膏ボードのような重い建築材料を使用することをおすすめしたいと思います。

なお、部屋の防音ということで付け加えたいことが二つあります。
一つは、音は小さな穴や隙間からも廻り込みますから、開口部などはできるだけ設けないこと、どうしてもドアなどを付ける場合は周囲に隙間を設けない遮音ドア(防音ドアとして建材メーカーからも商品化されています)を採用するようにしましょう。
もう一つ、最初に述べたような楽器を演奏するなどの音楽を楽しみたいような部屋では、音を遮断するだけでなく室内反響音も抑えたい場合があります。そんな場合は室内の仕上げ材として吸音性のあるものを用いる必要があります。ただ吸音性の高い仕上材というものはどうしても表面に凹凸がある柔らかい素材になりますので、汚れやすく掃除のしにくい材料になってしまいます。ですので音環境にそんなにシビアでなければ、表面仕上材で考えるより、家具やラグやカーテンなどのファニチャーで吸音性をあげてやる方が現実的かとは思います。

家具などで吸音




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