「鬼門」というのは家づくりにおいては北東の方角を指し、家相上は玄関や水廻りを置くことが忌み嫌われています。
若い方は知らない方もいますが、年配の方はほとんど「鬼門に玄関を配置する」事を嫌います。
設計する側も勿論それを承知していますから、予め玄関は鬼門を避けて配置するのが一般的ですが、家相という問題を抜きにして考えれば、実は鬼門に玄関を持って行きたくなる事も多いのです。
例えば、敷地が東道路に接する場合、素直に玄関の位置を考えれば建物の東側になりますね。
具体的には南東、東、北東のどれかになりますが、南東は日当たりが良いのでなるべくなら居室を持って行きたいわけで、そうなれば必然的に東、又は北東にならざるを得ません。
そして、東西辺より南北辺が短い小住宅の場合は間取りの自由度が限られていますので(家相という制約さえ無ければ)北東に作るのが一番自然な場合が多いのです。
こういう場合にどうするのか?
やはり、鬼門を避けて南東玄関にするか、或いは南にアプローチをつけて南中央に玄関を持っていくか、等々いろいろ考えてみてもどうも納得の行く間取りにはならない。
こんなときは「鬼門を無視するのが一番」というのが今回の話です。
もともと、鬼門云々という考え方は中国から使わってきて日本に定着したものですが、なんら科学的根拠を持っていません。「北東は寒くて湿気も多く玄関には不適当」というこじつけた理屈はありますが、それならばどの部屋ならそういう場所にふさわしいのでしょう。
最近は鬼門の本場の中国でさえも、家づくりに鬼門を気にする人は少ないと聞いています。
となれば、日本以外で「鬼門にしばられて家づくりをする」国は無いに等しいのではないでしょうか。
実際に、鬼門を無視(もともと知らないのですから無視という言葉はおかしいのですが)して建てている外国の人たちは不幸になり、鬼門を重んじて建てている日本家屋に住む人は幸福かというと、そんなわけはありませんね。
国連の関連団体が毎年発表している世界の国「幸福度ランキング」によると上位は常に北欧諸国が占めて日本はやっと50位あたりをウロウロしているようです。
日当たりが逆の南半球にあるオーストラリアやニュージーランドは10位あたりにいますので、
こう考えてくると、家相、とくに鬼門についてこだわる事にほとんど意味がないのは良く判ると思います。
私も、これまでに何十棟も鬼門に玄関がある家づくりをして来ましたが、皆さん幸せに(と言うよりも「鬼門に玄関のない家と比べて統計的有意差が無く」と言ったほうが正確でしょうが)暮らされています。
幸せに暮らせるかそうでないかは、住む人の生き方が決めることであって、決して鬼門や裏鬼門といった家相が決めることではありません。