家づくりを考え始めると、それまでは気にも止めなかった色々な事に注意が向くようになります。
書店のハウジングコーナーには、これでもかというほどの参考図書がいっぱい並んでいますから、いくつかを手にとってご覧になる機会もあるでしょう。
そんな「家づくり本」のなかで最近よく目につくのが「風水」関係の書物。
実際にご覧になると、それまで自分が計画していたプランやインテリアデザインの内のいくつかに「風水上問題が有る点」を発見して、あわてて検討し直すなんてこともあろうかと思います。
過去に家づくり経験のある方々のなかにも結構「風水通」の方がいて、「黄色は金銭運に恵まれるから書斎に使うと良い」とか「暗い色は運気が逃げるから寝室には良くない」とか「リビングに金属製の家具は良くない」などなど、いろいろと親切に教えてくれたりもします。
確かに、色や材質をどうしようかと迷うインテイリアの仕様決め時には、「風水的にはこちらの方が・・・」などとアドヴァイスされたほうが却って決めやすいという事はあるでしょうが、そんな風に決めていくと最後には風水にがんじがらめにされて立ち往生してしまうことにもなりかねません。
さて、風水とはいったいなんでしょう。
どうも中国で長い年月をかけて成立してきた運気に関する学問のようですが、学問というよりも宗教のようなものかもしれません。
様々な理論はあるようですが、学問的に筋道をたてて立証された理論ではなく、言い伝えられたものを体系的にまとめたもののようです。
まあ、易とか占いなどと同じように、「長い間の経験を元に統計的にまとめ上げた叡智の結晶?」というやつですね。
「風水は易占いとは違って統計学だ」という人もいますが、統計学なら統計的手法に基づいてちゃんと立証しなくてはなりません。
例えば、「黄色い部屋に住んでいると金運に恵まれる」というのであれば、「AさんやBさんは黄色い部屋で暮らしていたから金持ちになった」というだけではいけません。青い部屋や白い部屋に住んでいてお金持ちになった人だっていくらでもいますし、黄色い部屋に住んでいるのにサラ金地獄に陥った人だっているでしょう。
統計学的に立証したければ、無作為抽出した一定数以上の人間を黄色い部屋とそうでない部屋に住まわせて、極力他の要因に影響されないようにして長い間追跡調査をし、その結果を分析した結果そこに統計的有意差を認めた場合に限って初めて学問的に立証できたと言えるわけです。そうでなければ「統計的に」などという言葉を使うべきだはないでしょう。
私はそんな事が立証されたなどと聞いたことはないし、前述のような「黄色い部屋で金持ちになれるかどうか」などという壮大な実験ができるとは思いません。
ですから、宗教と同じように「信ずること自体に価値がある」という考え方からいえば存在そのものを否定する気は更々ありませんが、風水を配慮して家づくりをしたことはこれまで一度もありません。(もちろん、みなさん幸せに暮らしておられます。)
自分でこうだと決めた内容を「風水では・・・だから」という理由だけで変更しなくてはならないなんて全くナンセンスです。
「どんな色にしたら良いか判らないから何かの手がかりが欲しい」・・・そんな時にちょっと風水を参考にする程度で留めて置かれるのが一番よいのではないでしょうか。