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マイホームの新築時に気をつけておきたい注意点

構造について 

「外材は日本の風土に合わない」

外材は日本の風土に合わない説明図

法隆寺大工口伝の中に「堂塔建立の用材は木を買わずに山を買え」「木は成育の方位のままに使え」という文句が有ります。
これは木造建築においていかに材木の選定と使い方が重要かを述べたもので、この点については卓越した技量を持つ宮大工の棟梁と呼ばれる人たちが等しく口にするところです。

法隆寺大工口伝書
さて、現在の住宅建築のおいても(宮大工とはいわぬまでも)純和風の木造住宅を得意とする業者はいたるところにあり、そういう業者の営業マンがよく口にする言葉にこんな言葉があります。

「外材は日本の風土に合わないので良質な国産材を用いた我が社の住宅を・・・・」

外材というのは外国から輸入された木材のことで、「どの山のどの方位にて育ったものかも、どんな気候条件で育ったものかもわからない木材が日本の気候風土に合うはずがない、だから、建てたあとで反りや割れなどが発生しやすいので、そんな材料は避けて国産材を使ったほうがいいですよ」と言っているわけです。
実はこの言葉は、30年ほど前に輸入住宅ブームが起きたときに国内の在来工法業者が輸入住宅をけなす際によく使っていた文句でもあります。

私は国産材と外材が同じような品質で同じような価格なら、できるだけ国産材を使って日本の林業を、そして健全な森林保全環境を守っていきたいとは思っています。
しかし、本当に外材は日本の風土には合わないのでしょうか。

言葉遊びではありませんが、ちょっと「木材」を他の言葉に置き替えて考えてみましょう。

  1. 外国の草は日本の風土には合わない?
    ---- セイタカアワダチソウやオオキンケイギクなどの外来種が増えすぎて困っているのはなぜでしょう。
  2. 外国の動物は日本の風土には合わない?
    ----- ブラックバスやザリガニやアライグマが野生で増殖し過ぎて困っているのはなぜでしょう。
  3. 外国人は日本の風土には合わない?
    ------ 外国人は日本に来ると病気になったりするのでしょうか。逆に日本人が外国に行くと暮らせないのでしょうか。

そんなことはありませんね。
外材が日本の風土に合わないという理由は何もありません。最初に述べた法隆寺大工口伝の文句にしたって外国の山を買ってそこで成育した時の方位に合わせて使ってもいいわけです。
事実、このたび300年ぶりで再建されて大掛かりな落慶法要が営まれた奈良興福寺の中金堂では巨大用材として国産材が調達できずにアフリカ産のケヤキやカナダ産のヒノキも使われています。

興福寺中金堂


経験豊かな宮大工集団によって建築された中金堂は今後何百年もその姿を保っていくはずですが、それほどの建物ですら国産材にこだわってはいないのです。まして30年から60年程度で建て替えられている一般の木造住宅においては尚更問題にするようなことではありません。
もちろん、外材にも質の悪いものはあります。しかし国産材にしても質の悪いものはあります。
用途にあわせてそして予算に合わせて品質の良いものを選んで使えばよいわけで、外材とか国産材とかにとらわれる必要はないというだけの事です。

洋風が主体となった生活様式といい、中国製にすっかりお株を奪われてしまったエレクトロニクス製品といい、もう国産という概念にとらわれる時代ではなくなってきたのかもしれません。
(ちなみに我が国の木材自給率は2002年の19%から現在は35%まで回復してきているようですので、日本の林業の将来もそんなに心配しなくてもよさそうです)




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