キャンプや釣りで活躍するクーラーボックスですが、その強力な断熱性が災害時にも思わぬ威力を発揮することはあまり知られていません。
クーラーという文字から誰もが冷やす箱を思い浮かべてしまうので、冷えたものをそのまま保温する道具だとしか見ないのですが、保温するということは冷えたものばかりでなく当然温かいものも保温してくれることになります。
さあ、電気もガスも水道もストップした冬の我が家で被災後生活を送ることを想像してみましょう。
食事をするためにカセットガスコンロで貴重な水を沸かしてお湯をつくりました。余ったお湯はどうしますか。これまでは電気ポットが勝手に保温してくれていました。
同様にコンロと鍋を使ってご飯を炊きました。余ったご飯もこれまでは電気炊飯ジャーが勝手に保温してくれていました。
一度温めて食べた惣菜類も、これまでは電子レンジでチンすればすぐに又食べることができましたが、もう電子レンジは使えません。
朝炊いたご飯をおむすびにしておいて、簡単な惣菜とともにクーラーボックスの中に入れておけば、時間が経っても冷たい食事をしなくても済みそうですね。
このように、クーラーボックスがあれば、一度温めたものをまとめて保温しておいてくれるわけですから寒い時には本当に助かります。
もちろん、電気などの熱源はありませんから中に入れておいても徐々には冷えてゆきますが、非常時ですからそのぐらいは我慢できるでしょう。
お湯などは多少ぬるくなってもそれなりの使い方があります。歯が悪くて冷たい水では歯磨きができない人や、タオルを濡らして体を拭きたいような場合はぬるいぐらいのお湯が丁度良いかもしれません。
夏ももちろん大活躍します。 氷が調達できれば本来の目的通り冷えた状態でいろいろなものを保温できますが、被災生活では氷の調達はままなりませんので、断熱性を生かして日中の温度上昇を免れる目的での使用が主体となります。例えば朝には25度だった気温が午後には33度になるような場合、断熱性の高いクーラーボックスの中は最高でも30度を越えないでしょう。電気がつかえなくなった冷蔵庫の中の冷凍食品を自然解凍するような場合はできるだけこのクーラーボックス内で行うようにしたり、クーラーボックスの開閉をできるだけ周囲温度の低い時間帯にするようにしたりすれば、もっと低い温度をキープできるようになります。もし、店舗が開いていて低温の商品が購入できたらできるだけこのクーラーボックスに保管するようにします。
こうすることによって、酷暑のなかで食べ物の腐敗を抑えたり、常備薬の品質を保ったりすることができますし、なによりも温度の低い食品や飲料を摂取できることはありがたいことですよね。
もちろん、電気が来ないとはいえ電気冷蔵庫も断熱ボックスではあるので、同じような使い方もできるのですが、前扉式の冷蔵庫は開閉時に冷気が逃げやすいのと電気がストップしたときの温度をできるだけキープしたいので頻繁な開閉はしたくないわけです。冷蔵庫とクーラーボックスをうまく使い分けて真夏の急場をなんとか凌ぐことができるのではないでしょうか。
他の商品と同様にクーラーボックスも実に多種多様なものが販売されています。
災害用として用意する場合はどうしても大きくて価格の安いものに目が行きがちですが、一番肝心なのはその断熱性能(つまり保温性の高さ)です。
安価な製品は断熱パネルに空気層や発泡スチロールを使っているものが多いのですが、安いだけにあまり性能は高くありません。
断熱に真空層やウレタン断熱材を充填した製品はどうしても価格が高くなりがちですが、その分断熱性能にはたしかなものがありますので、備蓄用としてだけでなく普段使いとしても利用できますのでおすすめです。
本サイトの災害写真の出展は「消防科学総合センターの災害写真データベース」によるものです