このサイトでは災害時の食料について、以下の三つの考え方を紹介しています。
◎ 米飯中心の一般的な家庭であれば当面の食料はまかなえるので保存食は不要-----「食料について」参照
◎ 単世帯、老世帯、パン食中心等の食料ストックに不安があれば保存食を準備-----「保存食」参照
◎ 保存食などのストックは消費しながら備蓄するローリングストック法が便利-----「ローリングストック」参照
そして、いずれの考え方においても保存食というのはある程度長期にわたって品質を確保できるもの、少なくとも保存食というからには2年~5年程度の保存可能期間があるものと考えてきました。
当然、保存可能期間は長ければ長いほど良いというのが一般的な考え方でした。
しかし、この「災害備蓄用食料品は長期保存タイプを」という常識には少し疑問点があるのも事実です。
食品を長く保存できるようにするためにはそれなりの工夫が必要になります。成分の変更や製法の改良などもあるでしょうし梱包包装なども特別なものにしているのかもしれません。いずれにしても、長期保存を可能にするためにはそれなりの投資をしているはずで、そのために商品価格が高くなるのはある程度仕方が無いことでしょう。
例えば、井村屋の「えいようかん」という5年保存可能な保存食の定番的商品があります。この商品は一本60グラム5本入りが税込み540円で販売されているものです。一本あたりの熱量は171Kcalなので、1kcal当たりの価格は540/5/171=0.63円/kcal となります。
同じく井村屋に「4本入りミニようかん 練」という商品があります。こちらは賞味期限が6か月以上1か年未満となっていますが、1kcal当たりの価格は311/4/161=0.48円/kcal となります。
この場合は長期保存タイプにすることによって価格が3割増しになっているわけですが、長期保存にこだわらなければスーパーなどでもっと安いものが種類も豊富に販売されているのでこの差はもっと広がるわけです。
これはほんの一例ですが、とにかく「防災用」「長期保存可能」「災害備蓄用」などといった表示がなされた高付加価値商品がそのぶん高価格であることはまちがいありませんが、本当にそんなに価格差が出るものなのかという疑問は残ります。つまり長期保存タイプにすることによって原価は1割しかアップしていないのに販売価格は5割アップしたような品物を買わされているのではないか、とう疑問です。
もう一つの疑問点というのは、「長期保存可能な食品ほどローリングストックしない」ということです。
ローリングストックはとにかく日常的に消費しながら備蓄するという考え方です。
それに対して、長期保存というのは「日常的には消費しないで保存すること」ですから、基本的には相容れない考え方なのです。
保存期間が長いものを購入すると、それもその期間が長ければ長いほど、それを消費しながら備蓄するという気持ちにはなれません。どうしても、その期限が来るまでは触らずにそっとしておき、期限が来たら初めて買い替えてそのとき消費するという姿勢になるものです。
でも、購入したときは3年とか5年とかは長いように感じても実はあっという間に過ぎ去ってしまい、気がついたときは保存期限をかなり過ぎていたということになりかねないのです。こういう「いざというときに期限切れ」というミスを起こさないようにするのがローリングストック法なのですが、長期保存出来るという気持ちがそれを邪魔してしまうのですね。
生鮮食品などは購入してすぐに消費するわけですから、もちろん備蓄などは考えられません。
実は、ローリングストックに向くのは3ヶ月から1年ぐらいの保存期間がある、言ってみれば「短期保存食」で、しかも嗜好性が強く日常的に消費しやすい食品が向いているのです。
具体的には以下のようなものでしょう。
チョコレート
ナッツ類
ドライフルーツ
インスタントラーメン
羊羹、せんべい
これらは全てある程度の保存期間があり日常的に美味しく食べることが出来、しかもカロリーの高い食品たちです。
購入してから3ヶ月~半年以内に食べることを目安にしてローリングストックしておけば、いざというときにもきっと役に立ってくれるものと思います。
このような短期保存食があれば、敢えて災害備蓄用と銘打つ高価な長期保存食を購入する必要も無いというわけです。
本サイトの災害写真の出展は「消防科学総合センターの災害写真データベース」によるものです