冬季の災害用備蓄としておすすめしている「使い捨てカイロ」ですが、首筋や背中など本当に温めたい場所をピンポイントで温めるのには今ひとつ使いやすさに欠けることは事実です。
貼るタイプを下着などに貼り付ければなんとかなるといえばそうですが、着心地も悪い上に剥がすときに生地を痛めてしまうし、使い捨てですからランニングコストも馬鹿になりません。
そこで最近注目されているのが電熱ヒーターを内蔵した「電熱ベスト」です。
製品によって温める場所は、背中、首筋、腰、腹などまちまちですが、薄型の電熱ヒーターをベストに埋め込んでいるだけですので、カイロを貼り付けているような違和感もなく本当にピンポイントで温めたい場所を温めてくれます。
電源は(スマホの必需品ともなった)モバイルバッテリーから取るもので、ベスト内にそれを収納するポケットを有しています。
これを着て、モバイルバッテリーを装着してスイッチを入れるだけですぐに温まりますので、一度使い始めるとやめられないほどの快適さです。
被災後は自宅や避難先でただじっとしていれば良いというわけではありません。室内外の掃除や整理、家屋の修繕、食料や日用品の確保等々やるべきことは山のようにあります。こんなときに寒いからと言って厚着をした着ぶくれ状態では思い通りの活動はできませんね。
薄着でも温かい電熱ベストはその点でも大きなアドバンテージがあります。
それと、ほとんどの電熱ベストは温度調整スイッチを備えていますので、活動はじめは強にして、体を動かして温かくなってきたら弱にして、それでも暑いようなら切にしてやれば良いわけで、いちいち服を脱いだり着たりして調節する必要がないのもメリットの一つです。
この電熱ベスト、出だしの頃と比べると実に品数が豊富になってきました。
ベストとしてのデザインや肌触りだけでなく、加熱する場所やヒーターサイズによっても温熱効果はかなり違うので、自分にふさわしい製品を選択するのも大変なほどの品数です。
ただ、間違いなく言えるのは、加熱箇所が多くヒーターサイスも大きなものほど消費電力が大きいわけですので持続時間は短くなります。そこで持続時間を長くしようと高容量のモバイルバッテリーを装着すれば確かに長くはなりますが、バッテリーの重さや大きさが邪魔になるということになります。
私が現在使用しているものは、70×100ミリの発熱ヒーターが3箇所(背中上部と腰左右)のものですが、5,000mAhバッテリーを接続し中強度で約3時間使うことができます。
単純計算すると20,000mAhバッテリーにすれば12時間使えることになりますが、さすがにその重さのバッテリーを装着しようという気にはなりませんので、もし長時間使うつもりなら途中でバッテリー交換しながら使うほうを選びます。
さて、この製品を災害備蓄品としておすすめできるようになったのは当にモバイルバッテリーの進歩の恩恵です。
先ほど、「20,000mAhバッテリーで12時間」というお話をしましたが、これは「被災後に電熱ベストを一日使うためには20,000mAhのバッテリーを満充電で備蓄しておく必要がある」ということで、一昔前なら「高価で重いバッテリーをそのために備蓄しておくなんて」と見向きもされなかったはずですが、今は話だけでもできるようになったというのは大きな進歩です。
吉野博士のノーベル賞受賞で改めて注目されたリチウムイオン電池ですが、ノートパソコンやスマートフォン、デジカメ、スマートウォッチ、ゲーム機などで使われる小型のものからハイブリッドカーや電気自動車などでつかわれる大型のものまで、実に多方面で利用されるようになってきました。そして、その需要の拡大に伴い小型、大容量といった高性能化と量産化による低価格化が急激に進みつつあります。
この電熱ベストで使えるモバイルバッテリーにしても、例えば20,000mAh程度であれば7年前と比べて重さも価格も半分ほどになりましたので、やっとこんな話もできるようになっとというわけです。
もう5年先(2025年)には20,000mAhで200gで1,500円ぐらいのモバイルバッテリーが商品化されているかもしれませんが、
なにもそれまで待つ必要もなく、現在余っているモバイルバッテリーがあるなら、日常使いもできる電熱ベストは、寒がりの方には本当におすすめできる製品だと思います。
本サイトの災害写真の出展は「消防科学総合センターの災害写真データベース」によるものです