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 聴覚障害を扱った物語


失蝶記

山本周五郎  作

舞台は幕末、日本国中の各藩が勤王につくか佐幕につくかで混沌としている中、東北のある小藩でもご多分に漏れず両派に別れて激論が戦わされていました。王政復古を唱える若き藩士谷川主計は佐幕派の首魁である老臣真鍋綱を暗殺しようとして、間違えて同士であり無二の親友でもある杉永幹三郎を斬ってしまいます。その悔やんでも悔やみきれない間違えの元となったのは彼の失聴でした。
同士の敵として追われる身となった主計は逃亡先から杉永の婚約者であるかず子に長い手紙を書きます。この物語はその手紙の内容からはじまるのですが、面白い上に短編であることもあって、あっという間に読み終えてしまいます。
時代小説の中で聴覚障害に視点をあてた作品は非常に珍しいと思いますが、山本周五郎がこの物語の題名を「失聴記」ではなく「失蝶記」とつけた理由もなるほどと思わせるものがあります。
最後の結末はどうなるのか、それを含めて、心をあとに残す名作といえるでしょう。
(この作品は新潮文庫の短編集「日日平安」の最後に掲載されています)


それでは本文の中の一節をご紹介しましょう。

冬になってからですが、私はうしろの物音を感じることができるのに気がつきました。物音でなくとも、人の近よるけはいでも、ふしぎなほど敏感にわかるのです。人間が生まれつき備えている自己保護の本能とでもいうのでしょうか、誇張して云うと、蝶が舞いよって来るのも感じとれるくらいでした。「うしろに勘がはたらくというのはふしぎだ」と私は自分で苦笑しました、「どこかが不具になると、それを補うように躯の機能が変わるんだな」 躯そのものが不具者になる用意を始めた。苦笑するどころですか、私はそのときもいちど、医者から不具を宣告されたときよりも深く、激しい絶望に押しひしがれました。




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