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 聴覚障害を扱った物語


静かな爆弾

静かな爆弾

吉田 修一 作

テレビ番組制作会社に勤める早川俊平は典型的な仕事第一主義のサラリーマン。
それが為にこれまで付き合った女性とは長続きしなかった事も、別に意に介することはありませんでした。

そんな彼が公園で偶然見かけたのが響子。
閉園のアナウンスにも全く反応しなかったのは彼女が聴覚障害者であったからでした。
なぜか障害を持つ彼女に心を惹かれて交際し始めるのですが、次第次第に、彼女が自分とは全く違う感性を持っている事に気づいていきます。

野良猫に買ってきたばかりのハムを与えたのを偽善的だと感じる俊平に対して、「野良猫なんかを見るとつい、「もしかすると、こいつは神様かもしれないぞ、用心、用心」と笑う響子に、施しをする事と施させてもらう事の違いについて考えさせられたりもします。

物語は、起承転結の結がよくわからない終わり方をしますが、そういう分かり易いエンディングでは無い事が、却って、いろんなことを考えさせてくれた小説でもあります。

では、本文の中で心に残った一節をご紹介しましょう。

響子の耳が不自由な事を、電話で両親にうまく伝える自信がなかった。単なる順序の違いなのだが、耳の聞こえない恋人として響子を紹介するのではなく、響子という恋人の耳が不自由なのだと伝えたかった。ただ、それを響子本人に説明するのは難しい。
「息子の俺が言うのもヘンだけど、うちの両親、決して嫌な人たちじゃないから」
説得するようにメモ帳に書いた。
「嫌な人って?」
とでも言うように、響子がメモ帳の文字を指差しながら首を傾ける。
「だから、響子の耳のことで、なにか響子に嫌な思いをさせるような人たちじゃない」
走り書きして見せた。ゆっくりと読み終えた響子が、どこか悲しそうな顔をしてペンをとる。
「今どき、そんなわかりやすい人がいるわけないじゃない。そういうストレートな人がいないから、嫌な思いをさせれることが多いんだから」
響子が綴る文字を眺めながら、正直、どういう意味なのか分からなかった。それが表情に出ていたのか、そこまで書いたメモ帳を千切って丸めた響子が、新しい紙面にまた何やら書き始める。
「『あなたは耳が聞こえるけどそれを気にしない』って言われた事ある?」
そう書かれたメモを見せられ、俺は素直に首を振った。
「私たち、いつもそう言われるのよ。『あなたは耳が不自由だけど、私はそれを気にしません』って」


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