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 聴覚障害を扱った物語


愛していると言ってくれ

愛していると言ってくれ

北川悦吏子 作

新進気鋭の若手画家である榊晃次は子供の頃に聴覚を失ったために声も出せなくなっていました。そんな晃次と、都会の真ん中に実をつけた林檎の縁で偶然に知り合った女優の卵・水野紘子。簡単に言えば、この聴覚障害者の男性と健聴者の女性の恋愛物語です。

実はこの物語、1995年にTBS系の金曜ドラマで豊川悦司と常盤貴子の主演で放映されて平均視聴率21%と大ヒットを飛ばしたテレビドラマの完全ノベライズ版になりますので、すでに多くの方が内容をご存知のことと思います。
晃次が一度だけ大きな声で紘子の名前を呼ぶ場面。
タイトルである「愛していると言ってくれ」と嘆願する場面。
そのほかにもいろいろな名場面で涙を流しながらご覧になった人もいらっしゃるでしょう。
恋愛ドラマのセオリーは大切に守りながらも、随所に聴覚障害者がかかえる辛さやわびしさが織り込まれており、楽しみながらもいろいろと考えさせられる作品になっております。

では、本書の中で心に残った一節をご紹介しましょう。

『あなたといたってつまらない。だって、手話ってすごく疲れるし、それに、好きなCDも一緒に聞けない』 言ってすぐ、紘子は後悔した。つい言い過ぎてしまった。
晃次は何とも言えない淋しい表情をして、『悪かったね』と静かに手話を返した。
「さようなら」紘子は、そうつぶやいて家を出て行くしかなかった。
ドアを閉めてから、紘子は押し寄せる後悔に打ちのめされていた。もう嘘だとも言えない。なぜあんなことを言ってしまったのだろう。
ひとり残された晃次は、唇をかみしめめながら、わびしさにじっと耐えていた。
アパートに戻った紘子は、ぼんやりと晃次がくれた絵を見つめていた。
「なんで・・・・あんなひどいこと言っちゃったんだろう・・・・」
悔やむ気持ちでいっぱいだったが、どうしたらいいのか分からなかった。
晃次は公園の池のほとりに行ってみた。石を投げてみる。石は何回か水面をバウンドして飛んで行った。
〔あの石は、どんな音をさせて飛んでいくんだろう〕
別れ際に紘子の言った言葉が、頭に浮かんできた。
〔あなたといたってつまらない。だって、手話って疲れるし、好きなCDも聞けない・・・・か〕
ショックだった。紘子がまさかそんなことを思っていたなんて、考えてもみなかった。
〔全てのものに、音があったことさえぼくはもう、忘れてしまいそうだ。音なんて聞こえなくても心は通じるんじゃないのか、声なんか聞こえなくても、ぼくたちは、ふたりじゃないのか・・・・〕
たとえ声は聞こえなくても、ふたりの心の声はしっかりと聞こえていると信じていた。
しかし、それはひとりよがりに過ぎなかったのだろうか。晃次の心は、重くどんよりと沈んでいった。


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