一口にUFOと言ってもいろいろな使い方がされています。そのあたりを整理してから話を推めたいと思います。
これはその言葉どおり、なにものかを確認できない飛行物体ということだから、こういう広義のUFOということならいくらでも存在することになります。
例えば空を見上げて「鳥か虫か飛行機かわからないがなにかが飛んでいる」というならそれは未確認飛行物体となるわけですから。
これはある本の受け売りですが、これまで未確認飛行物体( unidentified flying object)として報告があったケースのうち、重要と思われるものを調査したところ、そのうち95%は正体を確認でき、本当に確認できなかったのは5%足らずだったということです。明らかになった正体というのは、鳥などの生物、飛行機やヘリコプターや気球や飛行船(またはそれらから発せられた光)、月や他の天体や人工衛星、隕石、自動車や列車のライト等であり、とりたてて不思議な現象ではなかったそうです。
では、のこりの5%こそが異星人の乗り物としてのUFOなのでは、と早合点するよりは、その程度の未確認が生ずるのが当たり前で95%確認できたということのほうが驚きだと解釈すべきなのではないでしょうか。
いずれにしても、それが何者かを確認できない飛行物体という意味でUFOという言葉を使うならば、それを否定することは誰にもできません。 しかしそれが「3番のUFO」かというと(理由は後述しますが)それは断じて違います。
地球の人類以外にも、この広い宇宙に高度の文明をもった異星人が存在するだろうことはまず確実でしょう。この太陽系にはわれわれ以外の生物はいないのかもしれませんが、太陽系なんて宇宙から見ればほんの小さなチリでしかありませんからね。
太陽系のあるこの天の川銀河には2,000億個以上の恒星があると言われています。太陽系のなかの恒星は太陽しかありませんから、まあこの銀河系の中には太陽系みたいなのが2,000億個あって、地球によく似た星もその百分の一、20億個程度はあると考えてもいいでしょう。
(注:2016年発行のホヴァート・スヒリング著「世界で一番美しい深宇宙図鑑」の中に「地球と大体同じ直径、質量、組成で、太陽に似た星の周りを回り、親星からの距離が水と生命の存在に適した範囲内に収まっている惑星は天の川だけとってみても何十億個もあるにちがいありません」との記述もありますので、この20億個という数字もそんなにいい加減な数字でもないと思います)
20億個も似たような星があれば、どんなに低く見積もっても1,000個程度の我々と同程度の文明を持った星が存在すると考えても間違いはないのではないでしょうか。
では、宇宙には我々が住む天の川銀河のような銀河がいくつ存在するのかというと、1,000億個以上(2兆個以上という説もあります)だろうと言われています。 となれば、宇宙全体で見れば100兆という数え切れないくらいの異星人が存在することになります。
その異星人が宇宙空間に乗り出す乗り物(無人有人を問わず)をUFOという呼ぶなら、(JAXAのハヤブサにしても彼らから見ればUFOですから)、その存在も誰も否定できません。 ただし、それを「3番のUFO」と考えてよいかというと(理由は後述しますが)それは断じて違います。
我々と同等あるいは我々よりも高度な文明を持つ異星人が存在するのは間違いなく、彼らが宇宙空間に乗り出すUFOも当然存在する。それならば、そのUFOが過去に地球にやってきた、あるいは現にやってきていると考えがちですが、それは違います。
その理由は大きく分けて3つあります。
一つは「遠すぎること」、2つ目は「くる必要(理由)がないこと」、そして最後が「明らかな痕跡がないこと」です。ではそれぞれについて詳しく述べていきたいと思います。
天の川銀河には少なくとも1,000個以上の異星人がすむ天体が有るだろうと述べましたが、なんと言っても直径が10万光年という広さに存在する星々ですから、そのなかで地球にやって来ることができる距離で探すとなるとどうでしょう。
まず大前提として「光速を超える移動はできない」という物理の常識を再確認しておく必要があります。これを否定してしまうと科学的な議論もなにもできなくなってしまいますので「話すだけ無駄」ということです。
光速は時速10億8000万kmという途方も無い速さで、それだけではピンと来ませんが「一秒間に地球を七回半」という驚くべき速さです。どんなに早い宇宙船を作ってもこれだけは絶対に超えられないという速さです。ちなみに現在人類がもつ最速の宇宙船は時速約34万km程度ですから光速の3,000分の1ぐらいなものです。
さて、太陽系以外の惑星で地球にもっとも近い星はプロキシマ・ケンタウリbで地球から4.2光年離れています。光なら4.2年でいけますが、現在の人類のレベルでは12,000年かかることになります。しかもその星はとても異星人が住めそうな「地球に似た星」ではありません。では、地球に似ている星で生命が存在する可能性があると言われているのがティーガーデンbですが、そこまでの距離は約12.5光年です。人類の宇宙船では37,500年かかることになります。
さて少し話は元にもどりますが、このティーガーデンbは銀河系にある「20億個の地球によく似た星」の一つであり、そこに異星人が存在する確率は(20億分の1,000=)0.00005%ぐらいと想定してきました。
もし仮に、それほどの低確率であってもティーガーデンbに異星人が住んでいて、またまた仮に人類よりも100倍速い宇宙船を作れるほどの能力を持っていたとしても、その異星人が地球にやってくるには375年かかるわけです。
これよりも近い星に原始的な生命が存在する可能性や、これよりも遠い星にもっともっと高度な文明をもつ異星人が存在する可能性はありますが、どちらも地球にやってくることができる可能性は限りなくゼロに近いことは明白ですね。
もう一度いいますが、天の川銀河は直径10万光年ですから、このティーガーデンbの12.5光年などはほんのご近所さんです。それでさえ、実際に接触しようと思えばこれだけ遠くになるのです。これが他の銀河系となると、一番近いと言われるアンドロメダ銀河まで地球から250万光年ということですからもう話になりませんね。
さて、異星人がくるには遠すぎてその手段となる乗り物がないと述べて来ましたが、それでも例のティーガーデンb星人が我々よりも100倍高速な宇宙船で375年かけてやってくることだってあるだろうとか、理論的な上限である光速走行を手に入れて12.5年かけてやってくる可能性だってあるだろうと言う人もいるでしょう。
しかし、そんなことまでして遥々地球にやってくる理由があるでしょうか。 逆の立場で考えてみればすぐ解ります。もし人類が今の100倍速い宇宙船を開発できたとしましょう。そのときに往復で750年もかかるミッションを誰が計画するでしょうか。
そこまでの技術を手に入れたらもっと近場でやるべきことがいくらでも有るはずです。少なくとも計画した当人が結果を確認できる、せめて50年以内で完結できるミッションでないと手掛ける理由が見当たらないような気がします。
光速走行にしてもしかり、そこまで途方も無い技術を手にするまで人類は地球に共存していられるかどうか甚だ疑問に思います。なにせ一秒間に地球を七回り半できる技術ですから、これを軍事技術に転用すればボタンを押せば一秒足らずで敵国の全ての基地を破壊できるわけです。そんな恐ろしい武器を手に入れた世界に人類が共存できるとはとても思えません。もしそれがクリアできたとしても往復25年のミッションですから、そんな将来に帰ってくる基地や故郷がそのまま残っている保証はどこにもありませんからね。
これまで異星人が地球にやってくる手段も理由も無いことについて述べてきました。
それでも、「ワープ航法」とか「ワームホール」などの言葉を使って宇宙空間を瞬間移動する手段を使った高度な文明を持った異星人がUFOに乗って地球にやってきていると唱える人たちがいることも事実です。
そんな空想的な話に理屈で持って反論することはできません。なにせ空想ですから。
しかし、これだけは言えます。「もし、本当に異星人が地球にやってきているなら必ず確かな痕跡や証拠を残しているはずである」と。
こんな事を言うと、「いやいや異星人がUFOでやってきたという情報は山のようにあるではないか」とい反論が必ずあります。実際にインターネットで”UFO事件”などで検索するといろいろな物が出てきます。一通り見てみるならウィキペディアの「未確認飛行物体」を参照するのが良いでしょう。
しかし、これらの多くの情報が本当に真実かどうかは不明(というより眉唾もの)です。UFOを見た、触った、異星人に遭った、会話した、火傷を負った等など、ほとんどは目撃談や体験談ばかりです。その目撃者が一人だけでなく何人もが同時に見たとか、有名人、社会的地位の高い人、科学者、軍人、警察官、宇宙飛行士など一般的にその発言に信頼をおけそうな人の目撃談などは特に信じられやすいのですが、いずれもそれが誤認や虚偽や妄想ではないと断言できるものはありません。
テレビで特番などを組んで放映されることも多いので、写真やビデオ映像などもその証拠のように扱われていますが、どれも不鮮明なものばかりです。
「異星人のUFOは地球に来ていない」ことを立証するのは悪魔の証明になりますから不可能ですが、「異星人のUFOが地球に来ている」ことを立証するには、たった一つの明確な証拠がありさえすれば足りることです。例えばUFOの残骸、異星人の死体が一つでもあればそれで全ての論争が終わります。それが無理なら、加工されていない鮮明なビデオ映像や同時に多くの人が別の角度から撮影した鮮明な写真でもいいでしょう。それをみて誰もが納得する証拠さえあればそれでいいのです。
明確な証拠はあるが軍や政府が隠しているという意見もあります。しかし、そんな事を隠す必要がどうしてありますか。隠すメリットなんてなんにもありませんし、そんな重大な事を隠し通すことなんてできないからです。
とにかく地球が誕生してから45億年、ホモサピエンス(現代人)が誕生してから10万年、古代文明が誕生してから5千年、この間に異星人が来ていることが明確にわかる(科学的に立証されている)証拠はなに一つ発見されていないのです。
つい我々は、異星人の文明が地球人文明の発達と同時期のように錯覚してしまいがちですが、それはとんでもない間違いで、宇宙の誕生は135億年前と言われているので、全宇宙のあちこちの星で何億年、何万年の時間差をもって文明が発達してきたに違いありません。早熟な異星人は地球の誕生以前からその文明を築き上げてきた可能性も大いにあります。今から3億年前に地球よりも遥かに発達した文明を持った星が2億年前には消滅してしまったということだってあったでしょう。
さて、仮に本当に光速やワープ航法を手に入れた超高度文明を築いた異星人がいて、UFOに乗って地球にやってきたのなら必ずなにかの痕跡を残しているはずです。恐竜の化石の中に異星人が打ち込んだ弾痕が発見されてもおかしくないわけで、とにかくこの長い何億年もの間にせめて一つくらいは物的証拠を残しているはずなのです。人類が初めて月に行ったときだって星条旗をはじめとして色々な遺留品を残してきたではありませんか。「でかけた先で出たゴミは必ず持ち帰りましょう」などとお上品なこと考えるexplorerはいないのです。
それにもし超高度文明をもつ異星人がわざわざ地球にやってくるならば、その目的は友好親善か略奪侵略のどちらかしかありません。(調査目的でUFOが来ているという意見もありますが、調査はその目的を達するための手段にすぎません。)目的が友好親善ならばなにもコソコソする必要はなく堂々と姿を現して接触して来るはずですし、後者であれば圧倒的な武力でもってあっという間に地球は征服されているでしょう。光速移動やワープ航法を手にしている敵を核ミサイル程度で撃退できるはずはありませんので。前者であっても後者であっても過去にそういうことがあれば明らかな痕跡が残ります。
とにかくたった一つでいいので(体験談以外の)まともな証拠がありさえすれば「異星人がやってきた事」に誰もが同意できますが、それが無い限り否定せざるを得ないのは当然でしょう。