念力とは物理的なパワーを用いずに、意思の力(精神的パワー)でもって物体を動かす能力のことを言います。
ユリ・ゲラーのスプーン曲げなどは一番有名なものでしょう。金属製のスプーンを、ほとんど力を加えることなしに、クニャクニャ曲げる事ができるのですから、しかもそれを多くの観客の目の前で行うのですから、世界中の多くの人がビックリしたのも無理はありません。
念力パワーの持ち主といわれる人は彼以外にも多く存在し、手を触れずに机上の瓶を持ち上げたり、離れた位置にあるカーテンを動かしたり、空にある雲を消したりと、実に色々なパフォーマンスが繰り広げられてきました。
離れた位置にいる人を引きつけたり押し倒したりする気功という技もこの範疇に加えてよいでしょう。
念力についてはテレビでも面白おかしく取り上げられていますので、これまでに念力パフォーマンスを見られた方も多いことでしょう。
実際、どれを見ても不思議なパワーが存在しており、それによって物(あるいは人)が動かされているように見えますが、そんなパワーが本当にあるのでしょうか。
もちろん、ありません。結果としてそのように見えるものでも、実際は他の原因で動いているのであり、精神的パワーなどで物体が動いているわけではありません。
ここで少し、念力に似たような現象を起こすマジックについて考えて見ます。
例のスプーン曲げには色々なトリックがあって、今では実に多くのマジシャンが(というより多くの素人の方も)その技を使えるのはみなさんもご承知の事と思います。
Mr.マリックのハンドパワー(超魔術とも言っています)パフォーマンスはどう見ても念力というものがあるように見えてしまいますが、本人自らこれは超能力などではなくマジックであると公言しています。
あのように不思議な現象にみえるものでも、もともとはマジックですから必ずタネがあるわけで、そのタネ明かしさえしてもらえば、なにが原因でその物体が動いているのかは誰でも理解できるわけです。つまりMr.マリックのハンドパワーは「なぜそうなるのか判らない」のですが、念力ではありません。
これが示すように、我々は「なぜだか判らない現象」を見ると「不思議な念力パワーがある」と短絡しがちですが、「原因が判らない現象」と「不思議なパワーの存在」は全く別物ですので要注意です。
この地球上で、離れている物体を操る方法はいくつか考えられます。
例えば、磁力、静電気、引力、風などを利用する方法です。
マジックの多くはこれらの力を利用して、うまく観客をごまかして、不思議な現象を起こしているように錯覚させることで成り立っています。静電気や磁石を使って離れた物体を動かせるのは理科の実験でだれもが知っていることですね。
自分はなにもしないで物体を操っているように見せるものもあります。空に浮かんでいる雲を消すのもそうですね。雲などと云うものは割と短期間で形を変えますので、空にポツンと浮かんでいる雲を指差して「今からあの雲を消します」と言って気を送るふりをすれば数分もすれば段々と消えていくものです。
ユリ・ゲラーの時計を止める放送も単に確率を利用したマジックでした。世界中の視聴者に向かって「今からあなたの家の時計を止めます」と気を送るふりをすれば、機械式時計の故障率×視聴世帯数だけ「時計がとまった」報告が寄せられるわけですから。
離れている人を操る方法は暗示を利用するのが一番簡単です。離れた位置の相手を突き飛ばす気功や、相手に念力を送って体表面の温度を変化させる術などは、まさしく暗示を利用したものです。
なぜなら気功で人間を突き飛ばす事はできても、人形は突き飛ばせませんし、疑り深く暗示にかかり難い人はビクともしません(大槻教授に気功が通用しなかったのは有名な話です)。
念力で人間の体表面温度を変化させることができる気功師も、犬の体表面温度を変えることはできません。
念力で物を動かせるという人がいたら、その人の風呂上がりを急襲して、なにかを動かしてもらうように頼むのが一番よいでしょう。つまり何もタネや仕掛けを準備できない状態で力を発揮してもらうわけです。本当に念力を会得しているなら、そんな状態でもなにも問題なく物体を動かせてくれることでしょう。 しかし、そんな人はいません。念力パフォーマンスは必ず、場所や時間や使う道具や衣装など必ず条件付きで実施されます。 まさにこれこそが念力などというものが無いことの証明ではないでしょうか。