ぼくは犬だけど人間の言葉がわかる
だけど人間の体になりたいとは思わない
だって 人間って毛皮がないでしょ だから寒いんでしょ
ぼくは寒がりだから やっはり毛皮が欲しいし
それにね 大きい声では言えないけど 犬の姿の方がかっこいいもんね
えっ 人間のほうがかっこいいって!
まあ その正否については置いておくとして
(あんまりここでムキにならないのが大人の対応ってやつ)
古来 体が獣で頭が人間だとか 体が人間で頭が獣だとか
そういう中途半端なのが 結構いる
前者でいえばケンタウロスとか人魚だとか
後者で言えばミノタウロスとか半魚人とか狼男とか牛頭天王とかね
この後者の仲間に猪頭天というのがいることを初めて知った
知ってた? 猪頭天(どうも ちょとうてん と読むらしい)
どこで知ったかというと富山県高岡市にある瑞龍寺
まあとにかくお見せしましょう
これがそう
どう 可愛いでしょ
怖い猪というよりも豚かうり坊(幼い猪) すこし犬にも近いかな
なんとも愛嬌のある目で上を見上げている
何を見上げているかというと
これ
そう 知らない人は全く知らないが 知る人ぞ知る烏枢沙摩明王
というか「オンクロダノウウンジャク」でもお話したよね
この清浄化の神様である烏枢沙摩明王に怒られている ってわけ
なにか悪いことでもしたらしいけど 一体何をやらかしたんだかはわからない
あどけない姿でキョトンと見上げているから 怒られていることすらわからない
でもね烏枢沙摩明王を描いた絵で下のような物があったから
やっぱり怒られているらしい しかも後ろ手に縛られているのがわかる
それがこれ
まあ この絵の猪頭天なら確かに悪そうな顔してるし
きっとそれなりのわけがあって明王さんも怒っているだろうと理解できるけど
瑞龍寺のうり坊みたいなのは どう見ても「弱い者いじめ」されているとしか思えない
ということで 早速ぼくお得意のインタビューを
「ねえねえ きみ どうして怒られてんの?」
「ん! ぼくのこと?」
「そう きみのこと」
「ぼくが誰かは知ってるの?」
「まあ いちおう きみが猪頭天であるところまではね」
「へえ〜 じゃあ話が早いや でも
ぼくたち猪や豚はきれい好きだってことは知ってる?」
「え そうなの じゃあトイレの神様とは相性ピッタリじゃん」
「ま そうなんだけど
汚れているのを見るとぼくは自分できれいにしちゃうんだ
烏枢沙摩明王は人間が自分で汚したものは自分できれいにしろというわけ
つまり ぼくが勝手にきれいにしちゃうから人間がダメになる
という理由で
ぼくが怒られているってわけ
わかる?」
「まあ わからんでもないけど どこか腑に落ちないね
きみは良いことをして怒られているんだもんね」
「そうでしょ そうでしょ
違うだろう〜違うだろう〜って言いたいけど
相手は格上だからね
それで キョトンとしてるわけ」
「なるほどね わかるわかる
反抗しているわけじゃないけど どこか訴えかけるものがある
そりゃないでしょ明王さん という表情が実によく出ている
まあ きみのつらい気持ちもわかるけどね
人間社会の職場でも理不尽な上司の怒りにじっと耐えているサラリーマンが大勢いるんだから
ここはこらえてくれるかな」
「う〜ん ・・・ いいとも!」
というわけで猪頭天くんへのインタビューも終わったわけだけど
早い話が 人間が汚さなければなにも問題はなかったわけで
あの像を彫った作者の意図は以下のようなものだった (と思う)
「自分で汚したものは自分で清浄にしないと罪もないだれかが苦しむ事になるんだよ」
ぼくもウンコのあとはちゃんと砂かけしてるもんね
日本の3大随筆って知ってる?
方丈記と徒然草と枕草子なんだってさ。
犬の小学校で習ったかな?
で、随筆って何かというと、
とにかくなんでもいいんで、
ダラダラ書いたやつらしい。
それなら・・
てな訳で書いたのがコレ。
細かいことは気にしないでね。
なんてったって犬だから・・
じゃあね ワンワン!