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紀州犬の早太郎が徒然なるままに書き綴る独り言

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チョキの巻

恋路ヶ浜伝説異聞

馬に蹴られて死んでしまえ

とは なんと物騒な文句なんでしょうか

ま 最近はこんな言い方は流行らないし
そもそも 蹴られようとしても その辺りに馬なんかいない

だから 善良な一般市民はこんな文句を言われることもないだろうから安心してもいいんだけど

ご存知のごとく この言葉が発せられる際には 必ず次の言葉がその前につく
「人の恋路を邪魔する奴は」

確かに恋路を邪魔される立場からいえば この程度の文句ぐらいは言いたいのは分かるけど・・

さて
人の恋路を邪魔す者とは 概ね 次の二つに分類される

A;とにかく人が不幸になるのが楽しくて仕方がない
B;邪魔をすることによって なんらかの利益が得られる

Aについては たしかに「人の不幸は蜜の味」ともいうから そんな人も居るんだろうけど
実はBのケースのほうが圧倒的に多い

どんな場合かというと 恋敵がいるケースである
つまり三角関係ってやつ

この場合 自分の恋を成就するためには なんとしても恋敵を蹴落とさなくてはならない

恋敵同士はお互いにそう思っているから
実は 恋路を邪魔する者は 恋路を邪魔される者でもある

ということは
「馬に蹴られて死んじまえ」 と発せられた言葉は 
そのまま自分に跳ね返ってくるものと思わねばならない

もし その場に なんでも願い事をかなえてくれる神馬がいたならば
暴言を吐いた途端に その馬に蹴られて死んでしまうことにもなりかねない

かくのごとく 迂闊に人の悪口を言ってはならない

わかりきった人生訓はこれくらいにして

そもそも「恋路」とはなに?
ということで
今回は恋路の秘密を探るべく
渥美半島にある「恋路ヶ浜」に行ってきた

koiji1.jpg


この恋路ヶ浜には一つの伝説があり それがこの浜の名前の由来となっている

その話とは

昔 高貴な身分の男女が許されぬ恋をして都を追われてここまで逃げてきた
人目を避けるために 女はこの恋路ヶ浜に 男は裏の浜に分かれて暮らすようになった
やがて二人共病にかかり 互いの名を呼び合いながら亡くなってしまった
哀れな女の心は女貝に 男の心はミル貝になったという

というようなもんだけど

あんまりあっさりしすぎてつまらない という方の為に
ぼくが詳しく語ってあげよう

時は平安時代の中頃 綾小路公麿という(ような名前の)貴族の次男坊がいた

この男 日頃は浮いた噂一つ立てられたことのない真面目な性格なのだが
なんと となりの藤原惟清(とか言う名前のおじさん)の女房(名前は知らないけど まだ20歳くらいと思われる)に恋をしてしまった
  
もちろん 許されない恋 禁じられた恋
禁じられても逢いたいの 見えない糸に惹かれるの という訳で
ときどき コッソリと逢ってお手玉遊びなんかをしていたのだが
悪いことはできないもので ついに惟清にバレてしまった

こりゃ 参拾六計逃げるに如かず と 二人は手に手を取って 都を逃げ出したのである
長い逃避行の末 漸くこの浜にたどり着き 地元の漁師の助けを借りて そのまま暮らすことになった

しかし ここで判らないのは「なぜここ?」ってこと
 
地図を見てもらえばわかるけど 恋路ヶ浜というのは渥美半島の最先端にある
東へ東へ逃げてきたのは判るけど  やっとのことで豊橋付近まで逃げてきて 
そのまま静岡から東国まで行けばよさそうなものを・・
急に方向転換してこんな岬に来たとは
 
まさに 追い詰められて とうとう袋のネズミになっちゃったような こんな場所になぜ来たのか?

実は二人は 東国を目指したわけではなく 
伊勢参りの行列に紛れ込んで 伊勢まで逃げてきたのである

そこで数日の間 小さな旅籠に泊まって隠れていたのだが ついに路銀が底をついてきた 
ある晩 二人で相談した結果 此の世で一緒になれないのならせめてあの世で添い遂げたいと
翌朝早く 地元漁師の船に勝手に乗り込み 伊勢の浜から死出の旅へと船出したわけである

ところが なんと幸運にも 
黒潮にのった船は昼過ぎには対岸の渥美半島先端 つまりこの恋路ヶ浜に漂着したのであった

死ぬつもりだったから朝からなにも食べてない二人が 浜に立ってウロウロしていると
どこからともなく美味しそうな匂いが漂ってきた

なんと 地元の漁師小屋でさっき採ってきたばかりの大アサリを焼いているではないか
せめてこの美味しそうな食べ物を一口食べてから死にたいと思った二人は
自分たちの身の上を包み隠さず話して 今生の名残にとその大アサリを所望したのであった

聞いて哀れにおもった漁師の夫婦 
大アサリ定食(というのがあったかどうか知らないけど)を食べさせてやり
「死んで花実が咲くものか」などと一人前の説教を垂れ 
二人の身が立つように計らってやった

こんな田舎に急に若い男女が現れたんでは 
噂が噂を呼んで都まで知られることになるかもしれない
しばらくは別々に暮らしたほうがよかろうと
女のほうはその小屋で(遠い親戚から来た娘ということで)
漁師の女房から海女の手ほどきを受けることになり
男の方は浦浜にある船倉に隠れながら ほとぼりが覚めるのを待つ事となった

このまま静かに暮らしていればなんていうことなかったんだけど

二人はこの浜に流れ着いた時に最初に食べたあの大アサリの味が忘れられず
二人が二人とも こっそり大アサリをつまみ食いするようになった

またしても 悪いことは出来ないもので 
この時期に発生した貝毒マリントキシンに当って食中毒を起こしてしまった

土地の人間は普段から食べ慣れているのと そもそも貧乏人は胃腸が丈夫なので問題はないのだが
二人はなんといっても育ちがいいだけに 毒には弱い

なんとかもう一度逢いたいものと 互いに相手の名前を呼び続けるのだが 声にも力が入らない
ついに二人とも ほぼ同じ時刻に 細々と名前を呼び合いながら息絶えてしまった

この二人の話を聞いた土地の人々は 「食い意地が張っているからそんなことになるんだ」と
それ以降 この浜を「食い意地ヶ浜」と呼ぶようになったが

「それではあんまり格好が悪い 将来の観光資源にもならないではないか」との異論が出て
ロマンチックな部分だけを取り上げ 「恋路ヶ浜」 と呼ぶ事にした

とまあ こんな事だったんではなかろうか というのがぼくの推測

さて 二人が好んで食べた あの大アサリ
今では この恋路ヶ浜の名物として付近の食堂で焼いて食べさせてくれるooasari.jpg
となれば もちろんぼくだってヨダレが出ちゃう
だいいち ぼくなんて どんなもの食べたって絶対に食当たりなんかしないもんね

期待に胸をふくらませて ご主人と一緒に食堂に入る
「あ ワンちゃんは外で待っててね」 
お店の人のつれない言葉で ふくらんだ胸も急にしぼんじゃっった

仕方がない きっとお持ち帰りにして 持ってきれくれるだろう
と思ったぼくの期待は 無残にも裏切られることになる
30分も待った挙句 爪楊枝片手に 手ぶらでててきた姿をみて思わず叫んでしまった

犬の食い意地を邪魔する奴は馬に蹴られて・・・

いちごぶらんとさがった

   

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随筆のイメージ

日本4大随筆のひとつ

日本の3大随筆って知ってる?
方丈記と徒然草と枕草子なんだってさ。
犬の小学校で習ったかな?
で、随筆って何かというと、
とにかくなんでもいいんで、
ダラダラ書いたやつらしい。
それなら・・ 
てな訳で書いたのがコレ。
細かいことは気にしないでね。
なんてったって犬だから・・
じゃあね  ワンワン!